***






その夜。




梨の木は嬉しくて、葉っぱから涙をこぼしました。


花をつけたわたぼうしも、嬉しそうに花を揺らしていました。







「これで、もう大丈夫だね。」


 花をつけたわたぼうしが言いました。




「え?」



「ぼく、春が過ぎたらまた新しい仲間を遠くへ飛ばしに行かなきゃ。」



 花をつけたわたぼうしが寂しそうに言いました。





「いなくなっちゃうの…?」



「…うん。」





― さわさわ



哀しそうな音が響きました。





「悲しまないでよ。」


 花をつけたわたぼうしが言いました。




「きみにはもう、あの子たちがいるじゃないか。」



「そうだけど……」









― さわさわ











「ねぇ梨くん。」



「なに?」


「梨くんの次の夢は?」



「え…?」



「だって、1つ目の夢がかなったんだもの。次の夢を見つけないと。」



 梨の木は悩みました。







「そうだなぁ。。」



「なになに?」





「ぼくは…」



「うんうん。」





「もうすこし暖かくなって、少し涼しくなった頃、ぼくは梨の実をいっぱいつけて…」



「うんうん!」






「そしたら、子どもたちに食べてもらいたいな。たくさん。」



「いいね!」




「できれば、パイで!」



「それはおいしそうだ!!」






ふたりは笑いました。


ずっとずっと笑いました。






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