ある日。梨の木が言いました。
「ぼく、夢があるんだ。」
「夢?」
わたぼうしは尋ねました。
「うん。いつかこの丘が子どもたちでにぎわって、一緒に遊べたらいいなぁって思ってるんだ。」
―さわさわ…
風が木の葉っぱを揺らしました。
その音は、どこか寂しそうです。
「大丈夫だよ。」
わたぼうしが言いました。
「僕の仲間たちがあちこちに飛んで行ってるもん!」
「…?」
梨の木は不思議そうな顔をしました。
「だから、春になったらあちこちでお花が咲くんだよ!」
わたぼうしは続けました。
「お花が咲いたら、子どもたちもきっとここに来るよ!だってここにはぼくもいるし、きみもいるんだから。」
わたぼうしはにこにこ言いました。
「そうか。きみたちは、春をみんなに教えに行ってるんだね。」
木は続けました。
「じゃあ、ここにも春が来たら、子どもたちが遊びに来るかもしれないんだね。」
「うん!きっとそうだよ!!」
ふたりは、一緒に歌いました。
早く春が来ますように。
子どもたちが来ますように。
***
春が来ました。
わたぼうしは、すっかりきれいなお花をつけていました。
梨の木は、まだ少ない葉っぱを一生懸命揺らしていました。
いつのまにか、小さな丘には他のお花もいっぱい咲いていました。
みんな風に揺られながら、楽しそうに歌を歌っています。
梨の木も、嬉しくなって一緒に歌いました。
すると 子どもが3人、丘の下から走ってくるのが見えました。
女の子と、男の子が2人でした。
3人は黄色い声を上げながら、走って丘にのぼってきました。
「わぁー!!!」
女の子が声をあげました。
「お花がいっぱい!!」
「でっけー木!!」
男の子も、声をあげました。
「すごぉい!!!」
「すげーー!!」
3人は、梨の木の周りをぐるぐる走り回りました。
― さわさわ
梨の木は、嬉しそうな音をたてました。
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