― さわさわさわ





風が、梨の木の葉っぱを揺らしました。

わたぼうしはびっくりして、あたりを見渡しました。





「・・・だ、だれ?」




― さわさわ




「ぼく、風さんにここに運ばれてきたの。だから、ゆるして。」



 すると、風に揺られた葉っぱが嬉しそうな音をたてました。




「いらっしゃい。ぼくは梨の木。ここで、ずっとひとりぼっちだったんだ。」



「ひとりぼっち?」


 わたぼうしは聞きました。




「うん。昔は仲間がいたんだけど、ここではぼくしか生きられなかったんだ。」



 梨の木は 続けました。




「だからぼく、ずっとだれかが来るのを待ってたんだ。」



 わたぼうしは嬉しくなって、言いました。




「じゃあぼく、ここにいていいんだね?」



「もちろんだよ。」





 ― こうして梨の木とわたぼうしは、小さな丘で仲良くなりました。






←Back     Next→